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はんにん

犯人

坂口 安吾

「群像 第八巻第一号」1953(昭和28)年1月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,695 字 · 26 页

青空文庫

人見はまるで自分に無関係の話をきいてるように動揺がなかった。ややうつむきがちに、ただ黙々としていた。目を開いてるが、眠っているようでもあった。

それを指して花井は云った。

「とうとうシッポを現しましたね、人見さんは。この人はサヨと情交があったんです」

「え?」

さすがに人見も、はじかれたように、顔をあげた。

「僕とサヨが? 何が証拠です?」

「サヨの良人は死ぬ前一月以上もあなたに診てもらっていたでしょう」

「そうです」

花井はニヤリと笑って言った。

「その費用をサヨは何で払いましたか。サヨは自分の身体でしか支払いをしない女です。それとも、あなたにだけはお金で払ったでしょうか」

人見は椅子の肱に両手をかけて、身を起していた。

そして彼はサヨの姿を思いだしていた。サヨは渋皮のむけた女であった。不潔ながらも、変に色ッぽかった。彼女はたしかに彼に支払いをしようとした。云うまでもなく、たしかにその肉体で。彼女はわざと膝をくずして、白い股が見えるように坐っていた。わざと片手を高くあげて後手にまわすと、腋が大きく切れていて、腋の下と腕の附け根と乳房の一部分が見えた。サヨは変な笑い方をして、彼にナガシ目を送った。