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はんにん

犯人

坂口 安吾

「群像 第八巻第一号」1953(昭和28)年1月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,695 字 · 26 页

青空文庫

「神サマの目を見たことがあるか」

「サヨの目を見ている間、そう思って見ていた。その目が開いているとオレが突けないと思ったのか、さア突いておくれ、と云って目をとじたが、それは一そう神々しく見えた」

「サヨは目をとじて蒼ざめた顔をしたか」

「目をとじたら、一そう神々しい笑顔に見えた。オレはサヨに云われた通り力いっぱいヘソを刺して、それから下へ引いた」

「サヨは悲鳴をあげたろう」

「一度も悲鳴なんかあげない。突き刺したとき、かすかにウッとうめいて、オレが短刀を引き下して抜いてから、よろめいてドスンと倒れた。しばらく苦しんでもがいたが、一度も叫ばなかった。サヨは苦しみながらオレに云った。仁吉は男だ、我慢しろと云った」

「それはどういう意味か」

「痛いのはしばらくだ、じき楽になるから、とまたサヨはオレに云った。そして、しばらくたつと、サヨは本当に楽になって、笑いをうかべた」

「そして何か云ったか」

「その笑い顔が挨拶の言葉だということがオレには分った。そしてサヨは死んだ」

「なぜサヨが殺されているとウソをついて届けたのか」

「サヨがそうしろと教えて死んだからだ。オレは一人で誰にも見せずに穴を掘って埋めると云ったが、そんなことはするなとサヨは云った。