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きょうば

狂馬

佐左木 俊郎

「新青年」博文館、1931(昭和6)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,577 字 · 6 页

青空文庫

坑夫達は、今、坑の中から引き上げて行きながら、青の前に通りかかって、足を停めたのだった。

「青! お前だって、生きているんだもの、何も食わずに、何も飲まずに、幾日も生きているってわけには行くめえ。」

「いくら馬だからって、随分ひどいことをするもんだなあ。これが人間のように口のきけるもんなら、黙ってはいめえ。なあ。」

「おい! 引き出して行ってやろうじゃないか?」

誰かが力をこめて言った。

坑夫の一人は、青の首に、自分の帯を投げかけた。そして青は、坑夫達の一群の背後に、全く力のない足どりでよろよろと引かれて行った。それは、牽かれているというより、曳き摺られている形だった。青は、二歩歩いては立ち停まり、三歩歩いては立ち停まるのだった。

「青! 後から押してやろうか?」

或る者はそう言って、青の背後から、両手をかけて押し上げたりした。併し青は、その人間を蹴るでもなく、斜坑の斜面を押し上げられて行った。

「おい! 青の頭から、何か冠せなくちゃ、駄目だよ。何十年も坑内にいた馬を、明るいところに引っ張り出すと、すぐ死んでしまうんだっていうからなあ。」

古参の坑夫が注意した。