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ねことしょうぞうとふたりのおんな

猫と庄造と二人のおんな

谷崎 潤一郎

「改造 新年号 第十八巻第一号」1936(昭和11)年1月1日<br>「改造 七月特大号 第十八巻第七号」1936(昭和11)年7月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,020 字 · 131 页

青空文庫

をして追い出したのだと、そう云う一念があるからだった。尤もそんなことを云うと、いや、そう思うのはお前さんの己惚れだ、それは成る程、姑との折合も悪かったに違いないけれども、夫婦仲だってちっとも良いことはなかったではないか、お前さんは御亭主をのろまだと云って低能児扱いにするし、御亭主はお前さんを我が強いと云って鬱陶しがるし、いつも喧嘩ばかりしていたのを見ると、よくよく性が合わないのだ、もし御亭主がほんとにお前さんを好いているなら、いくらハタから押し付けたって、外に女を拵える訳がありますまいと、そう露骨には云わない迄も、塚本などのお腹の中は大概そうにきまっているのだが、それは庄造と云う人の性質を知らないからのことなので、彼女に云わせれば、いったいあの人はハタから強く押し付けられたら、否も応もないのである。呑気と云うのか、ぐうたらと云うのか、その人よりもこの人がいいと云われると、すぐふらふらとその気になってしまうのだけれども、自分から女を拵えて古い女房を追い出したりする程、一途に思い詰める性分ではないのである。だから品子は熱烈に惚れられた覚えはないが、嫌われたと云う気もしないので、周りの者が智慧をつけたりそそのかしたりしなかったら、よもや不縁にはならなかったろう、自分がこんな憂き目を見るのは、全くおりんだの、福子