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ねことしゃくしについて
猫と杓子について
織田 作之助
「NHKラジオ放送」1946(昭和21)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,269 字 · 7 页
そうでしょう……?
言葉といえば、「猫も杓子も」云々という言葉があります。いつ頃出来た言葉か知りませんが、日本人がこしらえた言葉の中では、なかなか独創性に富んだいい言葉であります。表現――つまり言い現わし方そのものが独創性に富んでいるばかりでなく、「猫も杓子」云々という言葉の内容自身が、人間というものは独創的でなくっちゃいかん、不和雷同するな、人の言ったことや、したことの真似をすると嗤われるぞ――という、いわば独創の宣伝みたいな意味を含んでおります。ところがですね、「猫も杓子」も云々というような、こんな独創的な言葉を発明した日本ほど、実は猫になりたがり、杓子になりたがる人間の多い国はないのですから、全く皮肉極まる話で、いや、実にお話になりません。
みなさんは、日本を敗戦国にしたのは、軍閥と官僚だとお思いになっていらっしゃるかも知れませんが、実は猫と杓子が日本をこんなことにしてしまったのです。猫と杓子が寄ってたかって、戦争だ、玉砕だ、そうだそうだ、賛成だ賛成だ、非国民だなどと、わいわい言っているうちに、日本は負け、そして亡びかけたのです。
猫であり、杓子であるということは、つまり自分の頭でものを考えないということであります。