轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ねことしゃくしについて
猫と杓子について
織田 作之助
「NHKラジオ放送」1946(昭和21)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,269 字 · 7 页
これはおかしいことです。
正倉院の御物の公開があると、何十万という人間が猫も杓子も満員の汽車や電車に乗り、死に物ぐるいで、奈良に到着して、息も絶えだえになって、御物を拝見したということですが、まことにそれも結構なことでありますけれど、僕は死に物ぐるいの眼に会うことも猫になることも杓子になることも嫌いですから、ジャン・ポール・サルトルというフランスの新しい作家の小説を読んでおりました。「世界文学」という翻訳専門の雑誌の十月号にのった「水いらず」という小説でありまして、この小説は日本文壇にとっての新しい戦慄といっても過言ではないと僕はまァ思いました。日本の文学は結局生活の総決算の文学であり、人間を描いても、結局心境のありのままを描くだけですが、ジャン・ポール・サルトルのこの「水いらず」という小説は人間の可能性を描いております。しかも、サルトルの提唱しているエグジスタンシアリスム――つまり実存主義は、戦後の混乱と不安の中にあるフランスの一つの思想的必然であります。このような文学こそ、新しい近代小説への道に努力せんとしている僕らのジェネレーションを刺戟するもので、よしんば僕らがもっている日本的な文学教養は志賀さんや秋声の文学の方をサルトルよりも気品高しとするにせよ、僕はやはりサルトルをみなさんにすすめたい。