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ねこすてざか
猫捨坂
豊島 与志雄
「新文学」1948(昭和23)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,043 字 · 21 页
然しその大火が壮絶たることには変りない。
こういう冷酷なことを俺に言わせるのは、あの荷車のがらがらいう音だ。殊に夜更けのその音だ。浅間しかった。情けなかった。
其後彼等夫婦は荷車を盗まれ、それからどこへか立ち去った。
彼等にも、そうだ、アルコール・ウイスキーでも飲ませてやるがいい。
友のその酒は、なるほど、味よく出来ていた。そして強かった。俺もだいぶ酔った。
「金儲けが目的じゃないんだ。なるべく沢山の人を酔わせてやりたいんだ。」と彼は言った。
彼自身、もうすっかり酔っていた。俺のところへ来る前にも、だいぶ飲んだらしい上に、更にぐいぐいひっかけたのだ。
「おい、これからビールを飲みに行こう。この近所に、ビールを飲ませる家があるだろう。案内しろよ。金は持ってる。」
酒の肴が何もなく、海苔と沢庵だけだったので、彼には少し気の毒だ。酒も無くなった。ビールは酔いざめの水だ、と彼は言う。
外に出ると、彼は全くふらふらしていた。酔っ払ったばかりでなく、此奴、まだ眩暈がしてるんだな、と俺は思った。匍い廻ってばかりいたのが、完全敗戦になって、突然立ち上る。眩暈もしよう、ふらつきもしよう、よろけもしよう。