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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
11 一九四四年(昭和十九年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页
畑いじりつつ、ものを考えるほど畑仕事に習熟していないというのも事実ね。台所はすごいことになって、一旦その気にさえなると、御飯の仕度が出来上ったときは準備でちらかっている台所が片づいているという上達ぶりです。わたしは国男さんにきょうも申しました、「国男さんが一番得しているのよこんなにゆっくりした、仕事に追われない気分で家のことをするなんて、わたしとしたらほとんど大人になってからはじめてで、そのとき国男さんが一緒だなんて。何てにくらしいんだろ。肝心の旦那さまに、わたしは一口だって、こんな気分でたいた御飯をたべさせることがなかったのよ。畏れつつしんで、しかるべしよ」と。「だから定期進呈したじゃないの。」そうなのよ、市電が一系統十銭ずつになり、往復四十銭かかることになりました。定期だと、いくらかよいのよ、それを買ってくれたというわけ、団子坂―池袋。れっきとした勤め人ですものね、わたしだって。うちでは出勤といえばそちらと合点しているのよ。
それから前の交番が廃止になって空屋となりました。前の通りはそのために夜不安心なところとなって、おそくなると一人で歩くとこわいわ。