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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
11 一九四四年(昭和十九年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页
健坊歩き出しましたって。見とうございます。健坊は、うちの子としては明るい面の多い子です、太郎もおそらくあの暮しで、のびやかになるでしょう。御機嫌というものの影響をいつも受けるのなんか子にとってよくないわ。咲ものびやからしく、庭の花々についていつもうれしそうに書いてよこすそうです、こういう時がすこし続いて、あのひとのキョロキョロも直るかもしれません、そうすれば其は一番いい丈夫になりかたでしょう、しんから神経が休み開放されるのですから。
わたしの歯は、一本神経をぬいたところ、あとが水や湯がツーンとしみてしかめ面になるほど痛いのはどうしたわけでしょうね、妙なこと。今日よく話しますが。神経とるときに突つきすぎてしまったのかもしれないわね。
明日は火曜ですが月番第一日でいないといけまいから、今日歯医者とそちらを行こうかと思います、だとするともうやめなくては。この間うち台所用本で、深田久彌の「命短し」、矢田津世子の「鴻ノ巣女房」というのをよみました。こういう小説家たちが、みんな一種の語りて、お話し上手となってしまうのは不思議なこと。内面へ立体的にきり込まず、面白い話しぐちという風にまとまるのね。