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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
11 一九四四年(昭和十九年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页
「目黒のさんま」(落語)のくちね、殿様の御微行は、いつも下賤におなりです。実直な働く人々が、自分の身分に謙遜して、ちゃんとしてなくては失礼と思う反対ね。
きょうの二人遊びは、右のようなわけで肝心の午後が潰れてしまって、まことに残念でした。先週は国ずっといて、咲が来て大バタバタだったから、今日はほんとに待ちかねていたのに。でも、寿はよろこんで休んで帰ったから、あなたも計らぬ功徳をおほどこしになったわけです。寿も一人きりの生活は、食事の一人のことなどつまらないようです。あのひとも十二月から大変だったわけで、いろいろこまかいことで、可哀そうだと思うし、大局的に寿はそれで世間並のことを覚え、生活力も身につけるのです。よく変れる側が、人間学から云って大いなる利益を蒙って居ります。
この間うち、『スペイン文化史概観』という仏人のかいた(一九三七)ものですが、よんでいて、昨夜よみ終り、いろいろ深く感じました。これはスペインの一九三五年までの新しい希望とその実現の時代に及び、一九三五年以降の混乱によって再びその美しい向上の試みがこわされる頃までを、統一(中世の終)から書いたものです。