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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
11 一九四四年(昭和十九年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页
も文学において其は更に茫漠として居ります。科学は研究ノートをそれなり継承出来る部分があります、文学はどうでしょう、未来というものの中に、うちこめて、そこに期待するしかないようです、
こういう風にして、自分を益※(二の字点、1-2-22)捨てて行く心もちから、芸術家や科学者の才能が更新され、若がえるというのは、不思議な面白さね。自分に執しているものは、自分より大きく成長出来なくて、つまりは世俗の成功だの不成功だのという目やすに支配され、とどのつまりは世俗の日記と一緒に歴史のつよく大きい襞の間にまぎれこんでしまいます。山本有三という作家が、主人公に芸術家も科学者も扱い得ず、教師をつかまえるのは雄弁な彼の人生のリミットですね。
六月四日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕
六月三日 土曜日
きょうは、思いがけないことでわたしの時間が出来ました。国が、急に国府津の家の件で、役所の人とあっちへ出かけ、朝八時四十分で立ちました。けさは六時におきて台所へ出ました。珍しく八時すこし過にひとりになったので、この時と、早速郵便局へ出かけそちらの書留や小包送り出しました。