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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
11 一九四四年(昭和十九年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页
こちらの食物も極めて単調で、トーフなんか二ヵ月もたべられず、魚もないそうです、玉子もトリも。しかし、ジャガイモは、米とさし引ながらたっぷりあって煮ころがしをたべ、消耗の少いところからガツガツが少いようよ。畑からキューリもいできて、トーモロコシ折ってきて、其だけでもちがうわね、きもちが。子供ががつがつしていないのはうれしいと思います。
着いた九日の夜は夢中で臥てしまって(一時四十分発、七時五十分着)きのうは一日体がギシギシして茶の間にみこしを据えたまま動けず。夕方畑まわりをして健坊が、葉かげの南瓜に挨拶するのをうれしく眺めました。
きょうは、よほど体も楽になったのよ、こうやって手紙かく位。今にアンマさんが来るかもしれません、肩をもんで貰います。体のあちこちしこりがとれかけているのに、肩だけ怒らしているみたいにつまっているから、もんだ方が早く楽になるからって。
こうやって林町での生活を遠くから見直してみると、三月から実によくもやって来たと思いますね。全くトレンチ生活だったわ。捨てた城に一人いるようなものなのだもの。そういって笑ったのよ、わたしが今度こっちへ来たのはエポックになってしまったよ、もう林町の番をする気は沁々なくなった、と。