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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
11 一九四四年(昭和十九年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页
光から郵便小包出ないらしいのよ。鉄道便でくれました。こちらからは小包行きますが、島田と多賀ちゃんにおついでの折お礼を、ね。栄さんたちもおよろこびに草履くれました。うれしいわ。二足のうち、どちらかは役に立ちましょうから。もう、もとのは半分こわれたでしょう? はじめっからあやし気だったのですものね。
十月十日のお手紙ありがとう。風に散る第二巻の、あの荒廃時代の描写は本当におっしゃる通りです。時間をとびこしたリアリティーを感じつつよみました。そういう意味では随分参考にもなりましたし、ああいう南部の女性たちが、ともかくああいうひどい立場に陥ったとき馬一匹をも御せるということについて新たに考えました。わたしたちのところには馬もいないわ。従って御せもしないわ。第二巻は、描写もひきしまっているし、作者のテンペラメントとよくつり合ったところと見えて、なかなか大したものです。第三巻と言行録の七、八、お送りいたします。第三巻をおよみになったら、あのわたしのたのしみにしているお喋りをくり出しましょうね。
言行録、ちょいちょいお先に拝見して思いましたが、家光の時代というのは、丁度いってみると明治興隆期(四十年ころ)のようなもので、実に卓出した人材が多かったのね。