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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

11 一九四四年(昭和十九年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页

青空文庫

という風にやるのよ。日本の記者の愚問も相当ですが、幸なる哉、まだ家庭欄は、こんなおそろしさで全日本女性の好奇心を発揮いたしません。その上、一人の記者がデンワかけているのがアンにきこえます、「彼女は皮の旅行帽をかぶり、なめし皮のジャケットを着て厚底の靴をつけている」ところがどうでしょう、つい鼻の先にいる当のアンは木綿のブラウズをつけてズボンつけて、汗かいて、マアこの暑さに皮ジャケットなんか生きている者がどうして着られよう! と思って、びっくりしているのよ。

アメリカのそういう愚劣な宣伝病と暴力沙汰――すぐピストルを出す――は、アメリカという国柄の特徴のマイナスの半面ですね。勝ったものが勝ったもの、という神経の太いより合い世帯の社会で、個人というものの価値の目やすが、現代に近づくにつれて低下して来て、世に勝つための機会均等が、アナーキスティックだから、ギャングまで発育よくなって来てしまうのですね。日本の徳川末期の侠客、ばくちうちには、発生にモラルがあって徐々に堕落して町の顔役になったのでしょうが、ギャングの発生にモラルがあったでしょうか、ギャングについて私たちは本当を知りません、映画で妙に色づけられて居るに過ぎません。