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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
11 一九四四年(昭和十九年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页
烈婦というものはね、やせ型で、眉根キリリと、つり上り唇薄くやや三白眼なのよ。御亭主にも魂をとばしたりはしないものなのよ。勇婦というのは肥って丸くてよく笑って、甘えたいところもあって、でも腰ぬけではないものです。「一旦ことおこれば、ともに岩きにこもらまし 思ひね、わが背」というところがあってなかなかいい筈のものだと思って居りますがどうでしょう。わたしは、ぬけ上った額が黒赤く光って、肩の骨の張った烈婦よりも、桃太郎風の勇婦が気に入ります。勇婦は一本の花を手にもっているゆとりがあって。天日微笑という日光ゆたかな情景には鉢巻しても頬のふっくりした勇婦がふさわしい図柄ではないでしょうか。
わたしのフコフコも「整理の必要アリ」になってしまって、これからは、少くとも勇婦類似的にかかなくてはならないのは一大事ね。自分に、漠然と、云わずかたらずかぶせられる負担を、明瞭に整理しなければいけない、ということがよく分り、いろいろの御注意をありがたいと思います。
『名将言行録』のこと、あれは、お手紙にもあるように人物の価値というものについて書いてみたかったのでした。松平信綱は智慧伊豆とよばれ、十分自他とも其を許した男のようです、それは、通俗の耳に今日も伝わって居ります。