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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

11 一九四四年(昭和十九年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页

青空文庫

伯林の各家は地下室を居間として六七時間平気でガンばりつづけて来ているそうですが、こちらでは火消仕事が各人の責任ですから、消耗は大でしょう。うちの壕が、雨の日もなかでは濡れなく出来ているという丈もよほどの見つけものと申す水準ですから。この頃は段々寝起きが上手になって、用がなければすぐ寝てしまいますから、よほど大丈夫よ、御安心下さい。夜も早ね。大抵九時ごろ(わたし一人)もうすこし早くてもいいのです。その代り手紙さえ書く時間がなくなります。そちらへ出かける朝、暁に起されると、帰ってから眠らなくてはもたなくて、眠っている間に午後の大半はすぎてしまったり。わたしの器用な眠り術は、次第に効力を発揮して来るらしうございます。

ビジネス・アズ・ユージュアルということをもうすこし違った云い方で表現すると、段々毎日の生活が、アンユージュアル・イズ・ユージュアル(非常が常住)ということになって来て、そこではじめて悠々さが出来るのね。戦場的ゆとりと申しましょうか。思えばブランカも、そういう状況で生活することには既に幾分鍛練があるわけです。でも、わたしのたちは、腕力的肉体運動的非常には不向きで、精神的な同様事情に耐えるよりも不手であるのは欠点ね。