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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

11 一九四四年(昭和十九年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页

青空文庫

後者がより多くものを云って居りますね、公私混同せずという信用が大したものでしてね。姉たる又難いかな、ね。それから重い緑色の風呂敷包み抱えてエッチラオッチラ家まで歩きました。その中にはポリタミンと同じようなものが入っています。これももう無くなるというので三本もっているから重かったのです。そして庭から廻って食堂へ入ったら、今すぐ出て来そうにそこいら中とりちらかして寿が千葉へ帰っています、年末で配給が困るのだって。近々又参ります。あの人のいるまわりはタバコの粉でへこたれです。わたしはどうもタバコ好きになれないの。

すっかり(ざっと)掃除してパンをむして御飯たべ、これをかき出しました。もう四時ね、そろそろ馬崎が来ます、これは開成山へ送る荷のことで相談に来るのよ、家具を送りたいのですって。それがいいわ、ここがもし疎開にでもなれば、来年迚も今ほど運べますまいから。

六時十五分迄に電球もって日暮里駅へ行きます、凄いでしょう、先生、書生の暮しはこういう風よ、卯女の家で電球がなくて百燭つけてハラハラしているのよ(電球隣組配給、今切りかえで市中で買えないものだから)灯が洩れるところへ丈盲爆がきますから冗談でないでしょう。