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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
11 一九四四年(昭和十九年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页
そういう印象を得ていらっしゃるとしたら、其はわたしがそういう方面が下手で、時々こわがっているそういう瞬間が結果としてそう映るし、そういうことにもなるのね。わたしに対しては、しわいという評は当りません。実際の技量が低くて、重点を巧みにとらえゆく力量が不足で、そちらの緊要に鈍感で、世間並から見ればおどろくほど大きい気で暮しているから時々妙にこわがるという結果です。それはわたしのような気質のものが、自分で無理なやりかたをしているとき(ひとまかせで結構、という人間が足りない腕で自分で万事思案してやるから)生じる哀れな滑稽です。滑稽で終らない結果もおこすから、わたしとしてはそういう自分の未鍛錬の部分も自分にゆるしているわけではありませんけれども。でも、あなたもよくおくりかえしになることね。わたしがおどろいて笑うと、きっとあなたは、だって其はブランカがそれ丈くりかえすということだよ、とおっしゃるでしょうね。
わたしに百万遍しわん棒と云っても、私はニコついているだけよ。しかし、ブランカは自分の人生をすっかり入れこにした心で暮しているのに、そんな風に思える時があるというのは、よほど、やりかたに下手な未熟なところがあるのだね、と云われれば、其は全く一言もないわ。