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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
11 一九四四年(昭和十九年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页
暫く遊んだ牧人が小憩みをしに傍の叢に横わったとき、その全身に鏤ばめられたように輝く露の珠は、何と奇麗でしょう。
牧人の自然さ、賢こさ、人間らしくよろこびを追ってそれを発見してゆく様子。
あなたはあの散文詩を、あなたらしく多弁でなく要約して書いて下さったと思います。詩にあらわされる精神と感覚のおどろくべき奥行きと複雑な統一は全く比類ないと思います。それは本当にどっちがどっちとも分けられません。精神の力がそれほど感覚を目醒ましく美しくするのであるし、感覚のすばらしさが精神にこまやかな艷やかな粘着力を与えるのであるし。私たちのところにいろいろの詩集があるということは無双の宝ね。これは形容でありません。どういう形ででも高められた生命の発露は詩であり、私たちは単に貧弱な読者にすぎないというのではないのですものね。
椅子をのりつぶしたこと、何とおかしいでしょう、そしてかわゆいでしょう。大方そういうことになりそうと思ったわ、そしてすぐバルザックが何脚かの椅子をのりつぶしたこと、思い浮べました。バルザックは誇りをもって手紙にかいているのよ、僕はもうこれで何脚目の椅子をのりつぶしたよ、と。