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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

11 一九四四年(昭和十九年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页

青空文庫

それでも、もう決心しました。あなたはどうしても行った方がよいと思っていらっしゃるのだし、行けるときに行っておくべきのは明らかですし、参ります。もうこの話はやめましょう。行かなければならないから行くのに、多くいう必要はないわ。心からあなたの占星術の当ることを希望いたします。

川越の方はお話した通り。ここもつまりは引越しますまい。御主人公の考えかたは、生活一新のための絶好の機会とか、程度の差があってもよりましな方という風にゆかず、新しい方を借金して買って(きのう買った人は十三坪の家(借地)六千六百円よ)さてこちらを処分するとなっても、そういうものの売買の統制のために借金が返せないということになりそうだからやめるという風の様です。子供らを国府津にやって一先ず安心してそうなったようです。あちらへ行く迄に、平塚、横浜等、通過出来なくなるところもあり、どうせ遮断されてしまいましょうが。マアそれならそれでいいわ(引越しのことよ)ここがどうなるなどということは土台わたしにとって問題ではないのですから。わたしの留守の間にこちらが原っぱになったって、そんなことはおどろきもいたしません、勿論無事を願うのは自然ですが。