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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
11 一九四四年(昭和十九年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页
すこし床の中にころころしていて、それから降りて来て珍しく紅茶とパンをたべました。パンがやっと配給になりましたから。但しお砂糖はこれ迄〇・六斤のところ又〇・一斤減るそうで、決して安心してサジにすくえません。でも、きょうは、こんなにうれしい日なのですもの、いいわと自分に云ってお茶をのみました。
庭へ出て、今ボケが咲いている、それを剪って来て小さな壺にさしてテーブルの上において、その花の下蔭というような工合でこれを書きはじめて居ります。
食堂にいるの。大きいテーブル、長さたっぷり一間ほどのテーブルですが、その長い方にかけていると、左右に十分翼があるので大変工合ようございます。いろいろの人がこの位の大長テーブルで仕事したのがわかります。ペシコフもこの位の机よ。この位の机をつかったのがトルストイやペシコフで、チェホフのヤルタの書斎にあった机はもっと小さかったのも、何かその人々の特徴があるようで面白うございます。白と藍の縞のテーブルかけがかけてあるので、ボケの花の薄紅やみどりの葉の細かさもよくうつります。
十日のお手紙ありがとう。あのお手紙のかきぶりを大変心にくく思いました。