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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
12 一九四五年(昭和二十年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,583 字 · 240 页
一服してさて入浴と思っていたら、なかの口に誰か来て、それは目白の先生でした。六時頃来られる筈だったのに、〔中略〕電話で伺いを立ててから来ようとしたら池袋のぐるりに公衆がなくて歩き歩き千川の避難先のうち迄帰ってしまって出て来たのだそうです。声を揃えて笑いました。〔中略〕其でもペンさんは三、四年ぶりでこの先生に会ったのだしあれこれ話しているうちに省線が間に合わなくなり、こういう顔ぶれは珍しいというわけで泊ることに一決し、客間に用意をしたわたし達は二階へひき上げようとしていたらブーがはじまりました。
この先生はこれ迄二度ひどいときに来合わせて大いに助けて貰ったので、さて又今夜は小さくあるまいと冗談云ったらあの調子で、団子坂と肴町の間のやけのこり区域が又苅りとられました。幸うちの極近くへは落ちず。しかしシャーを三度ききました。二度目のシャーが終ったら、男が一人スタスタ入って来て御苦労さまと先生に挨拶しています。誰かと思ったら菅谷さんの父親でした。当直で田端駅に泊っていました。「奴等」が(そういうの)田舎へ行って私一人だから心配して、段々こっちなので駈けつけてくれたの。