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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

12 一九四五年(昭和二十年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,583 字 · 240 页

青空文庫

一時前に停電になってしまいラジオも電燈も水道もなしよ。こうして確実にやけのこりの部分を掃かれて行くのを見ると、もうもう居るべき時でないと思います。

わたしの田舎ぐらしの用意として、財務整理(!)のため来月初旬まではどうしても東京にいなくてはなりませんが、それ迄ここ数日大活動をして、ペンをつれて一応どこか山形辺の温泉に一先ず行き、そこで一ヵ月もいるうちに、きまればそこへ行くということにいたしましょう。温泉というのはね、マサカズの話で国の生活があの土地の生産者に寄食的にだけあって公共奉仕をしないので、不人気なのよ。「一人よけいに人をよびよせるのは、ハア其だけ自分の食い量が減るこんだから考えなさるがいいと云っているんです」作物を守っている人のこころもちはそうでしょう。わたしはそういう口にくるしい餌では生き難いし、わるい亭主をもったのと似ていて、中條さんと云えば旦那とわたしは別ですという生活はなりたちませんものね。こんなひどい東京にいて、私がこうしていられるのは、わたしの与える無形なよろこびやたよりに対してわたしに便利なように便利なようにと考えて、ナッパの一かたまりもくれる人が多いからよ。