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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
12 一九四五年(昭和二十年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,583 字 · 240 页
もしかしたらこの次引上げの意味でこっちへ来る時分にやっと読んで頂けるのかもしれないと思います。
こちらには、十四日に来たのよ。十日に来る予定でいたところ、うちの菅谷には切符なんか買えない由で駄目。閉口してあきらめかけていたとき一馬という咲の兄が来て自分の切符をくれる話となりました。全く望外のことで大よろこびしたけれ共十二日に来るのが来なくて、やっと十三日の午後もって来てくれました。そこで急に支度して、ペンに久喜まで送られて来ました。国の迎えが主眼で。上野では(一時二十五分)福島行きでどうやら座席をとりましたが赤羽からひどいこみかたで久喜でペンがおりるときは窓から出ました。窓からというとこわいけれども案外なのね。大いに意を強うして郡山でも其をやらなければなるまいと思っていたところ、ともかく体は普通に降りました。大風呂敷の背負袋、国府津へなんか持って行った茶色のスーツケース(覚えていらっしゃる?)それにベン当なんか入れた袋。モンペ、くつばき。凄いでしょう。背負袋からは雨傘が突き立って居ります。
引上げ準備のため忙殺され疲れきっていて、汽車にのったらゆっくりしたかったのに、何しろ座席の(向い合う)間に腰かけているものがあるほどの上に、あいにく向いにこしかけた男女とも罹災して大いに気合がかかりっぱなしの人物なので