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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
12 一九四五年(昭和二十年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,583 字 · 240 页
そういう話、そんな事があったので、ブリュラールのこの文句はああやっぱりこう思うのねと面白く思えました。
男の人たちは自分の才能について、大抵の人が一とおり考えるらしいのね、人生というものを見わたしかかった年になると。それに比べて多くの女のひとたちはその問題以前のままで人生に送りこまれてしまいます。しかし、一応考える男の人たちにしろ、才能というものと処世ということとを何と顛倒し混同して考えているでしょう。真の才能というものは、こわいものだわ。持ち主をして其に服従せしめる一つの力であり、一つの人生をグイグイと引っぱってゆく強力な人間磁気です。この磁力の歴史的興味を知らなかった過去の天才たちは多く「不遇な」天才として自分自身を感じたりしたのね。ピエール・キュリーとマリとはその磁力にみちた人々であり互にひき合う魅力を満喫した人々でありそれは普通に云われる男女の間の魅力をはるかにしのぐ魅力、かけがえなきもの天と地とのようなものだったと思います。だからマリはピエールが馬車に轢かれた後は義務の感じだけで努力したというのもよくわかります、ね。
ああ、わたしはこんなに話し対手がないのよ。