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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
12 一九四五年(昭和二十年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,583 字 · 240 页
こうして、何ぞというと、この隅っこへひっついてしまうぐらい。炉ばたでいろいろ喋っていますが、いつも買物の話、荷物の話、汽車の話。わたしは一人で、もう何ヵ月もそんなことばかり考えて来たのだからもう結構よ。本当に人間の話題が菰包みばかりになってしまうというのは、何たることでしょう。この状態はもう今月一杯で終られなければなりません。ここの人々は百喋って一つのコモ包を始末するという風だから猶更わたしは飽きたのね。一人でいれば退屈しないのに。
わたしはここへ来たら極めてストイックに自分の生活プランを立て其を実行しなければなりません、どれ丈手伝い、どれ丈勉強するかということをはっきりさせて。わたしはこういうリズムのない万年休日のダラダラ繁忙は辛棒し得ません。大の男が、何を考えているか分らない眼をして炉辺に一日いるのを見てもいられません。
わたしの人生はゴクゴクむせんで流れて居ります。胸のしめられるような思いで。ですからね、大いに智力を揮って、その熱い流れを、生産的な水源、発電所に作らなければね。
こんな生活の中で折角のわたしが何となく気むずかしく鬱屈したユリに化してはたまりませんものね。