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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

12 一九四五年(昭和二十年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,583 字 · 240 页

青空文庫

しかしむずかしいから妻にしてしまったのでしょう。

大帝康煕 長与善郎 岩波新書 近代の明君と「支那統治の要道」をかいた本らしいけれど、近頃の長与善郎は文章に流動性が欠けて。

移動させてもって来た本たちは少くて、大した優秀なコレクションでもありません。ほかにセザンヌ、コロー、ゴヤ、ドガなどの本。

さて、島田からおたよりがあったでしょうと思いますが、達治さんが応召しました。七月の中旬に。もと入隊したところの由ですが、八月十日頃こちら辺と同時に相当だったから心配です。のみならず、島田のことが気にかかります。お母さんのことを思うとわたしは切ない気がいたします。速達をおくれて拝見して、すぐ速達の手紙さしあげました。又昨日もかきました。ここからあすこまで何日かかるのでしょうね。以前のときと違いますから、達ちゃんの仕事のあとを人におさせになるということも出来ますまい。

わたしがどれ丈たよりになるのではないけれども、お母さんを思うと黙っていられず、ともかく網走へ行ってお目にかかって相談して、その上で何とか方法を考えたいと申しあげました。こんなに北の果、西の果と心が二つに分れて苦しいことは初めてです。