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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

12 一九四五年(昭和二十年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,583 字 · 240 页

青空文庫

岩国では昇降口から出ましたが。半島へかえる人々解除の人々、それがみんな体のもてる限りの荷物をもつのだからえらいことです。托送が無事に着くためしなしというような不信用が漲っているし、解除の人々は大体自分の荷物の内容について神経過敏ですから。

三時三十五分位に広島へ着く筈のところ七時半頃に着。いつものようにのりかえようと思って一旦降りましたが、駅は全く旧態なく地下道丈もとのままです。島田へ行くのは何時に出ますかときいたら、片腕のない少年駅手が、四時二十分! と申します。四時二十分って――午後? と訊いたら四時二十分て云ったら午前だぐらい分ってるだろう! こういうあいさつです。次は何時です? 分らん。さては、と思って又大急ぎでかけ戻り、幸停車していたもとの車にのって岩国まで来ました。ここで三十分ほどで海岸まわりの本線にのって無事つきました。

東海道と山陽本線は、東北本線と何たる異いでしょう。いままでよりもずっと時間がかかりここまで来たのに、まるで東京からぬけきらないままのような気がします。焼跡つづきだから。急行ですからすこし大きいところにしか止らず、止ったところは皆実にひどくやられて居ります。