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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
12 一九四五年(昭和二十年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,583 字 · 240 页
(1―3)
二十三日づけのお手紙をきょう二十八日頂きました、この頃あんなにあつかったり煙かったりしたのに爽やかそうにしていらっしゃると思ったら、やっぱりそういうお気持よいことがあったのね、およろこび申します。こんな手紙がどこから来るのかとスタンプしげしげ見ましたがうすくて見えず。平常の時よりひとしおと眺められます、こんなエハガキ面白いでしょう? 有楽町駅のスタンドで買いました、大正頃こういう輪の人力車がありました。
(2―3)
四月二十八日の夜。こんな飾り菓子のようなエハガキを御覧下さい。現実の色調は、まさかこれよりは遙かに典雅です。風雪という風流な力が人間と同じように其に耐える建物は淳化させて行きますから。でも、あなたは山を見てお育ちになったから空の下で視線にこたえる山の姿はおなじみ深いわけね。いつかお母さんがコンピラ詣りをなさったお伴をしたとき、内海の山々の遠景を大変興ふかく見ました、山陽道の面白味はああいうところね。
(3―3)
こういう美しさを愛すのは、日本人独特のように思えます。月の動きに時間の推移を感じながら昔の人は光りの中に溺れて夜をあかしたのでしょうね。