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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

03 一九三六年(昭和十一年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 50,453 字 · 101 页

青空文庫

すべて充実したもの、生粋なるもの、自然力でもそういう発現をする場合、常にどっちかというと単純なような形であらわれ、しかも云いつくされぬ美にみちている。人間も、この美に精神を鼓舞されるには、出来あいの生きかたでは駄目であるから、私はつい自分を幸福な者の一人に数える次第です。こちらはまだ蚊帳はつりません。そちらは? 太郎はこの頃ニャーニャという言葉を覚えました。ではおやすみなさい。又書きます。

[自注2]第一信――公判後、百合子からの第一信。

[自注3]心苦しく思います――一年二ヵ月ぶりに面会して、宮本への差入れ状態が非常にわるかったことがわかった。一月三十日に中條の父が死去したとき、顕治は弔電をうつ金さえもっていなかった。百合子が市ヶ谷の女囚の面会所で家のものに会うたびに、あっちは大丈夫かしら。ちゃんとしている? ときいたとき、百合子のきいた返事は、いつも、ええ大丈夫。御安心なさい。ちゃんとしていてよ、という返事と笑顔だった。

しかし現実では、顕治は不如意のために疲労していた体の栄養補給ができず、結核を発病した。

[自注4]クリムサムギンのおじいさん――百合子はマクシム・ゴーリキーの伝記を書こうとしていた。