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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

03 一九三六年(昭和十一年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 50,453 字 · 101 页

青空文庫

八月二十九日 〔市ヶ谷刑務所の顕治宛 駒込林町より(十国峠(1)、熱海峠(2)の絵はがき)〕

八月二十九日 土曜日。

きょうはスエ子、緑郎、紀(従弟の一人)と江井という顔ぶれで、熱海をまわって十国峠を通り、つい最近出来た強羅公園のドライブウエーを宮の下へ出て夜十時すぎにかえりました。十国峠も強羅も私には初めてで、大変愉快でした。峠の上の濃い霧、すっかり道路が変っている国府津の家の前。〔以下絵はがき(2)〕などいろいろ大変印象づよかった。かえりには大森の沢田屋でカニをたべ、賑やかなのにびっくり致しました。十国峠の入口はこのエハガキのようになっていて、八十銭とります。ゴーラの方は一円五十銭を橋銭のようにとる。そこでこのハガキを買い、スタンプを押させました。芝居がかって可笑しい写真! 右手の方へ行くのです。この夏はじめての遊楽でした。又こまかくは手紙で。

八月三十日午後 〔市ヶ谷刑務所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕

第九信。八月二十七日の夜から。

きょうは体によくない天候でしたが御気分はいかがだったでしょう。皮膚がひやっとしていて汗がじっとり出る。