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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

03 一九三六年(昭和十一年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 50,453 字 · 101 页

青空文庫

小山内薫以来のことです。鑑子さんは実にこれ迄努力をして来て、これからもしっかりやってゆくでしょうが、私はこの二三年の間に両親をそれぞれ特別な事情の下で失って、感銘深いものがありますが、しかし、良人を失ったということは、その悲しみの性質において全く別のものであることを痛感しました。全く別のもの、全くその感覚においてちがうことである。死んで貰っては困る。実にそう思う。心と体とが、そう叫ぶようでした。暮している場所や事情やそれはどうでも、生きていること、そのことは絶対の価値をもっている。元より複雑ないろいろのことをふくめてのことですが。

もうじき父の一周年になります(一月三十日)。母の本はあのようにしてつくられたので、父の記念出版をしたいが、それには様々の困難があり、こまっていたら国民美術協会で大河内正敏氏や石井柏亭その他の人が一冊の『中條精一郎』という本を出して下さる由。私は大変うれしゅうございます。家族で出すよりずっとうれしい。それで一昨日、一昨々日は、「父の手帖」という文章を一寸かき、その前には又もう一つの別のをかき、更に十二月十日頃までにもう一つ二つ短い文章をかく予定です。