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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
04 一九三七年(昭和十二年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页
あのひとは私が徹夜がいけないとかいろいろいうと、常識を笑っていたが、この頃私のいうことも本当と身にこたえて来ているらしい。熱は出して居ります。稲ちゃんずっと書いています。すらりとしてあの人らしいもの。とにかく私は、この夫婦を実に大切に思います。私にみになるような気付を云ってくれるひとは外にない。六芸社の本[自注16]などについて批評を書いた鶴さんの文章は、友愛の珠玉です。
私は二十日頃から仕事をはじめ、小説だけにかかってずっとやっている。毎日いくらかずつ書いて。沢山の時間を考えて。本質的に勉強しながら、自分を発育させつつ学びつつ書いて居ります。徹夜はしてはいないけれども、小説を熱中して書いていると、そこの世界が二六時中私によびかけて招くから、気が立って、頭が燃えて、床の中でやはり長く眠らない。しかしそれはお察しのように愉しいし、その時間は有益なのです。あなたに喋りかけて、そうでしょうといったり、ひとりあなたのこわいろをつかったり、いろいろ芸当があるのです。そして、猫と遊ぶ。この猫は前便に書いた猫、ひどい好人物的猫で、猫を好かないものの家にいついてしまいました。