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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
04 一九三七年(昭和十二年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页
林町では国男が盲腸手術後の脱腸(ヘルニア)になって又手術すると云っています。二三日うちにやるらしい。寿江はこの頃近所のアパートに大体落付いて、昼飯や夕飯をよく一緒にたべます。
Sさんという元からの看護婦が池袋の堀の内にいて殆ど毎日来てくれ、寿江のインシュリンの注射をしてくれる。この頃寿江子は英語の勉強をはじめ、性格にしっかりしたつよいところもあるのに結局はどっちつかずで、人生の評価の土台がない。二十三の女の子というのはこういうのかしらと昨夜も感じました。この位いい素質をもっているのに推進力としての情熱が足りない。体が弱いことに帰しているけれども、それは間違いです。もし体が丈夫でなければよい生き方が出来ないのなら、私たちなんか、年々歳々どこから生活に対するこのような愛や信を獲て来るのでしょう。今岩波文庫のスティブンソンの「若い人々のために」というのを一寸よんでいて、この人が、あんな体で海洋の孤島に生活してしかもどんな人生の見かたをしていたか分って、大変面白い。
勿論歴史的な違いはあるにしろ。いつか去年あたり私が手紙で書いた情熱と感情のちがいをやっぱりこの人も知っている、さすがであるとニヤリとしました。