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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

04 一九三七年(昭和十二年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页

青空文庫

Dさんの家庭とXは久しい以前から知っていて、その私の知らなかった時代にXは、善意からであろうが、智恵ちゃんや阿母さんとして忘られぬ深刻な打撃を与えていて(療病に関し)迚も妥協の見込みないわけなのだそうです。

僅か一二ヵ月の間に自分達のみならず周囲にも浅からぬ波を立て。軽率であったという言葉以上のようなものです。

私の心持では、斯様のこと、分るようで分りかねるところがある。どんな気持で人生を見て、自分の一生を見ているのか。生活をよくして行こうとする意志とか努力とか知っていて、云っている人でも、何だか釘のない組立てもののような工合で。実に変な気がします。私としては其那ことで貴方のところへまで或心持を波及させられ、腹立たしい気がします。

然し、おかしいことには、私のそういう腹立たしさの深さなどは又一向通じて居らぬのだから。親切な心をもっている人間をも、その親切に限界をつくらせ、親身にさせる度合いをうすくする人というものがある。

とにかく、そういう工合で、彼の人達の交渉の内容はすっかり変った次第です。従って貴方が不快にお思いになる点は自然消滅してしまった。