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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

04 一九三七年(昭和十二年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页

青空文庫

今年は、それを買います。そして、それを買うことが実にたのしみで、うれしい。新しいおとその道具からあなたに注ぎ、私につぎ、そして親しい大事な友達に注ぐ。

漱石の金剛草の話、私もその本はやはり面白く同様の印象でよみました。漱石の文学論、十七世紀英文学史、いずれも大事な只一つの鍵をおとしているだけ、そのことが今日明瞭に分るだけ、しっかりとしたもので面白い。英文学史なんか、ああ漱石が只もう二箇の「何故?」を発してこの分析を深め得たら、と痛感した。狭いところにいて読んで。文学論にしろ、堅固周密な円形城壁のようだが、真中がスポンとぬけていて。すべての分析がそれぞれの線の上でだけ延ばされているから、簇生していて相互関係の動きと根本に統一がない。あなたのおっしゃるとおりの原因なことは明かです。

あなたの時計は直って来て、この机の上にあります。金時計というのは、私は全く見なかった。賄のこと、まことに残念ですがまだ分りません。きょう島田からお手紙で、お金がつき、大変よろこんで下さり、よかったと思います。達治さん達も一層本気で働く気分を励まされていると仰云っています。