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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

04 一九三七年(昭和十二年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页

青空文庫

より大きい美のためには。私たちはそういうたちですね。ああ、こういう話をしはじめると限りがなくなってこまる。保田与重郎は『コギト』を出し(雑誌)日本ロマン派の理論家であるが、この頃は王朝時代の精神、万葉の精神ということを今日の文学に日本的なものとして提唱し、そのことでは林、小林、河上、佐藤春夫、室生犀星等同じです。現代には抽象的な情熱が入用なのだそうです。三木さんは青年の本質は抽象的な情熱をもちうるところにある云々と。そのような哀れな空虚な青年時代しかこれらの人々は持たなかったのでしょうか。二十五日に文芸春秋社の十五年記念の祭があり、稲ちゃん、俊子さん等と行きましたら、小林秀雄というひとがお婆さんのような顔つきで、私に妙なお土砂をかけました。フウー。では又。これから仕事をします。どうかよくおやすみになるように。

三月一日 〔市ヶ谷刑務所の顕治宛 目白より(五色温泉の山の写真の絵はがき)〕

三月一日、小雨。白揚社へ最後の原稿をもって行って、神田で寿江子と支那飯をたべるために歩いていてこれを見つけました。これは奥羽の五色温泉の山の上の高原の雪景です。私は九つ位のとき父と祖母と一緒に五色に一夏くらしました。