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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

04 一九三七年(昭和十二年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页

青空文庫

今あの家には叔父上夫妻、冨美子(十二)で、私はこの小柄な美しくて堅い小娘とあっちこっち廻って歩きながら一種の桜の園を感じました。あなたが、お母さんへのお手紙で、うちのことを知らすのはユリのためになることでもあるし云々と云っていらっしゃる、そのことを思い出しつつあなたの少年時代をも深くその感情に入って感じつつ歩きました。あなたは林町の生活を御存じないから割によいことを多くお考えだけれど、それにしても、こういう時代の推移の姿を見ることは又私には刻みつけられるものがありました。そういう荒廃の中で、中庭の苔は美しく日光をすかして見える。そこに坐って叔父さんは「駅」の父さんが楽しむということを知らないなど仰云っている。母さんがこの頃は金の話ほかせんようになったなど。私は「そうではありませんよ。お母さんは生活の事情によって、ゆとりが出来ればなかなか趣のわかる方ですよ」など喋る。あなたのことも。写真を見たりして。然し、野原は断然整理しなければ駄目です。こちらは島田のように単純にゆかず、(負債について島田の母上も御存じなし、私も何だか伺えない)マアボチボチ片づけていらっしゃるほかないでしょう。