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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
さて、十日づけのお手紙をありがとう。十四日朝着。割合かたまりますね。八日に書いたが今頃着いたでしょうか。私が十一月に書いた手紙の中での希望について、丁寧にふれて下さってありがたく思いました。おっしゃる通りもうわかっては居りました。云わば眼を見ただけでも分るというようなものでもあります。それでも、ちゃんと、私の心に在った当時の重量を察してこうしてとりあげて下さることは大変にうれしい。こういう慎重さというものはお互の生活の中では大切な働きをしていると信じます。こういう慎重さによって私は自分の気持に対して責任を感じ、またあなたのお気持に対する自分の責任をもはっきりと知るのですから。いろいろな点から私はこの頃一層深くあなたという方の実に活々とした心持の抑揚やリズムや溢れるニュアンスを理解し、美しい巖にうつ波、とびちる飛沫、現れて消える虹の眺めに飽かぬ思いです。幸にして、私もいくらかはあなたにとってより興味あるものに成長しつつあるでしょうか。
この間、生活というものは背水の陣をしいてしまわなければ落付けるものでない、とおっしゃったこと。耳と心にのこり、面白く翫味しています。