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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

この婦人作家が、その後、一方でよりひろい見聞にさらされつつ他方昔ながらのものに足をかけて生きているために、流転も往年より内容において複雑となり害毒的になり、破綻的となっている。プラスであろうとする側のもので緒口がついた人的交渉をも、マイナスのもので潰して結局健全な部分(人間的にも文学的にも)からは全く離脱してしまう道どりは、現実の仮借なさを語っていると思われます。

――○――

十時に消燈がどうしてもおくれることについて。どうして、どうしてもなのか納得ゆかないと仰云った。いつも決してゆかないのとはちがうのよ。どうしてもという表現は、あらゆる努力にかかわらず、ではなくて、何と云っても、或はやむを得ず、そういう範囲での内容です。私のいろいろのことに対する要求のお気持から、どうして、どうしてもなのかと仰云るのは分るが、そういうものからすこし間隔をおいて、毎日の暮しの中にはいりこんで来るあれこれ、子供や全くの病人ではない生活のあれこれというものの実際の面から御覧になれば、とりあげて一々の例を並べ立てるまでもないこととしてわかっていらっしゃるのです。そう思うわ。