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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
そこには何か刻々に生成してゆく精神の敏感さが燃えている様が反映して居り、自分の二十歳ごろとくらべ、人生への翹望が情感的な爆発(翹望それなりで)をする女の燃えかた、燃えたい勢でたきつけの見わけのつきかねるようなのと、それが思索的な追求となって発現する典型とを、今日にまで及んでいるものとのつながりで、深い愛着をもって見較べました。歳月のへだたった今日に、微笑をもって回想されるというような点もあることがわかりました。
夜になったがまだ待ち人は(手紙のことよ)来ず。あしたの朝になったらば郵便や、早くもって来い、駈けてもってこい。雨にぬらさずもって来い。
きょうは計らず非常にやさしい絃のピシカート(指頭奏法)で桜坊色の小さな丸帽子の主題が演奏されるのをききました。今猶耳についている。
四月十二日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕
四月十二日 第三十一信
きょうの暖かさ! もう桜がちりはじめました。このあたりにはよその庭に桜が割合にあって花見いたします。上落合の家ね、あすこの二階から見えるところに八重桜の大木があって、重々しく圧迫するような八重の花房を見たのを思い出します、あの時分の手紙にそんなこと書いたことがあったでしょう? 花の下蔭という光線のやさしい照りはえについては、徳山でのお花見で初めてその実感を