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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

もうそのあたりから、緑暗色の外見は実に陰鬱なコンクリートの高さ一丈、底辺の厚み三尺三寸とかいう高壁が蜒々と松の木の間、小丘の裾をうねりつづいて丁度野原の家の前の辺が正門になる由。周囲の樹木の色との関係で平面に見たときああいう色は便宜なのだろうと理解されますが、道行人はエレベーションで見たのですから全く陰気な印象です。正門という辺はまだ出来ていず、その壁は野原のお墓ね、あの日当りのいい、いかにも野の真中の、あのずっと手前を通過して、郵便局よりの墓地のところで終る由。野原の奥座敷の鶏舎よりの廊下の障子をあけたら、いきなり朝鮮人の宿舎の窓があって(鶏舎をかりている)裸の男や何かいて面くらいました。その連中は鶏舎一棟を十五円でかりている。三つに室が分かれているところを一つは雑居、一つは食堂、一つは親方というのがその家族と住んでいる由。朝鮮の唄声、朝鮮の笛の音が、朝目をさましたときからきこえました。明笛は独特の哀調がありますね。唄は南ロシアの半東洋民族の節に似ていていろいろ興味があって、冨美子が、この人たちが、お米をとぐバケツで洗濯したり、一つの洗面器で洗ったり、煮たり、そこから食べたりするのをびっくりして観察して話していました。