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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
きょう、『中央公論』と『日本評論』とがのっていて、『日本評論』ではパール・バックの「愛国者」という小説の抄訳か完訳か、広告が出て居ります。これは日本の長崎や日本人や、日本に留学している中国人やらが出るのですって。バックはどのような材料によったのでしょうか。
同じ『日本評論』に富沢有為男の「東洋」という小説の広告あり。題が多くを語っている、そのような作品でしょう。しかしこの題からバックの取材(日本人など扱う)を考え合わせ、日本の文学の複雑な内包的可能性というようなものについて考えます。日本の文学において見らるべき視野は、明かに地理的にもひろがって居り、それによって人的諸関係もひろがって来ている。日本の小説が東洋というような題をもちたがる気分が生じている。そのことの中に、現在は盲目性がその中軸となって居ること、ならざるを得ないような事情が、この新しい文学上の条件を非常に特殊なものにしている。非文学的な性質にしている。こういう時期がどのように経過するか、そして真のひろがりがどのように文学の上にもたらされるか、これは十分注意をもって観られるべきことです。