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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

今度は本当に御自分も御自分の目で見ていらっしゃれて、うれしいし張りあいがあるし、共通の話の種が殖えてようございます。島田で、東京へ行こうと思うとおっしゃったとき、私は飾りなく云えば、さてと困ったの。実に困ったの。おいでになり、第一日第二日まだお気持がきまらず、それがわかりましたが、もう今日では、あなたのお心もよくのみこめたから、いっそせんない思いをさせることは云うまい、云うたとてどうなろうか、というところに落付いて、こんなに皆が大切にしてくれるのもあなたのおかげ、と思っていらっしゃる。大変結構です。御上京になって甲斐があったと申すものです。あなたのやさしい笑顔や、その上でお母さんがどんなに足をとどろかせなすっても、ゆったりと持ちこたえる気持の豊かさ(ゆたらかというのね、あっちでは)にふれて、しこっていたものがとけたようなお気持と見られます。よかったことね。二日のお手紙の、奥の手のお望み[自注15]というところ、大変ユーモラスに「ハアよう知っちょりやる」と笑っていらっしゃるという工合です。これらはすべて望み得る最上です。私の心くばり、いろいろのお伴、皆甲斐あった、本当にうれしゅうございます。