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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

夜は寒い由。隆ちゃんも支那大陸の広さにおどろきの第一印象を語って居るのは面白い。日用品何でもあり、やすい(内地より)支那人苦力が沢山いて色は真黒です等。短いけれどもよくわかるたよりで、二十一日に出立して二十六日手紙書ければ順調に行けたというわけで何よりでした。宛名は

北支派遣沼田部隊気付及川支隊江藤隊

です。こういう字を見ると、達ちゃんとはちがって手紙や小包、時間がかかりそうに思われますね。早速手紙書きましょう。お母さんも芝居にお出かけの前一安心でようございました。

林町の二人お送りしてかえって来ました。菊五郎の「藤娘」なかなか見事であった由。特に音曲がよかったと、お母さんは素養がおありになるから大満足。明朝そちらのかえり写真(一家で)とる手筈になりましたから、追って御目にかけましょう。目白の家だといいのですが、太郎がはしかのなおりかけで外出出来ないから。

宇野浩二が『読売』に、「この頃は作家が片っぱしから流行作家になる、わるい心がけだ」と云っている由。全文よまないからわかりませんが、それだけのことさえ云う作家がすくないから目につきます。久坂栄二郎「神聖家族」