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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
五月十一日 第三十八信
ひどい風ですね、そして大変むし暑いこと。よくお眠りになりましたか。珍しく私は夢を見て、大きい家畜小舎と奇麗な芝生と川村女学院を見ました。川村女学院というのは本当は、目白の大通りにあるのですが、その夢では林の間の芝生の横にありました。可笑しいこと。そして、亡くなった母がそこからうちへかえる途中、よその家の鶏小舎の屋根にのぼってそこから狭くるしい垣の間へおりて、垣をお尻の方からくぐって来るのを一心に待っていました。格子ががらりとあいて、鶏小舎の主人が出て来たのに、私が何か云っている、つまり、あやしい者ではないというようなことを。
昨日は、手紙かいてから本を七十頁近く読み、隆ちゃんやその他先日来たまっていたところへ手紙をいくつもかき、夜音楽をききました。日本で初演のが一つ、フリュートのコンチェルトが一つ、あとヴェトーヴェンの第三(エロイカ)。久しぶりで面白うございました。第一のは、楽器の使いかたとして玄人らしいこったところがあるらしいけれども、音楽として語り溢れるところがなく、頭で作られていて、大変面白いようで面白くないもの。