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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
きっと島田からのお手紙がついて今頃は同じことがおわかりになっていると思います。
きのうと今日で「マリイの仕事場」を読み終りました。なかなか面白いし落着いた作品です。パリの女仕立屋の生涯と縫女の様々な生きかたと雰囲気とが、女仕立屋という仕事のひどさと一緒によく描かれて居ます。「光ほのか」これは最後の作らしいが、それよりずっとようございます。しかし訳者はこの小説をいました、でした調で書いて居り、仰云いましたと迄は行かないが、云われましたという風な敬語をつかって、マリイの人柄を出そうとしています。すこしこれが疑問です。甘いと思われる。含蓄というようなものは、人柄の篤さというようなものは、そういう云いまわしにはないと思われますし、原文に敬語がつかわれていたとも思われません。
女のやさしさ、或は心やさしい人というものを、敬語のつかい方で現わそうとするところ、何か今日の雰囲気と合わせて却って俗っぽい。女のひとの作品が、文化のより高い方へという意味で評価されるのではなくて、よりつみがないというようなところより文学専心というような面で見られている現在のありようとも、対応している訳者のジャーナリスティックな神経があるようで。