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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
ところが光田さんにしろ林さんにしろ、特に老年の光田さんという人の心持は、スケールが大きくて、そういうこせついた一箇人箇人の一寸した插話というような網にかかって来ないのです。だから結果として実話的なものからは遠くなったのですが、私はしみじみその点敬服しました。その人は救癩と減癩そのことについてなら、いくらでも話します。しかし自身のこと、又箇人のこと、決してヒロイックに語らない。クリスチャンですが。本気でそれにかかっている人の没我、それはあながちクリスチャンだから謙遜だというようなものでもないのです。私には他の例で実にそういう没我の確乎性を実感せしめられているわけですから、その人の内面のありようが血液の流れの幅として感得されました。そういう意味で愉快でした。クリスチャン・ドクターですね、しかし話の間にそういうものが根本に作用しているという風には決して話さない。そういうところにも永い経験の結果があらわれているわけでしょう。病理から入ったのだそうです。病理解剖から。二十年後日本は無癩としたいという目標の由。広東省辺に非常に多い由。インドにも多いよし。伝染だから隔離がなければひろがります。