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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

光田氏反応と云って菌を一遍煮たのを注射すると、ひどく腫れてうんで菌を押し出す作用が健康人にはある、それを注射してふくれないのは、見たところ何ともなくてもあぶない、保菌ということになる由。これが経験せられてから、病の有無などの鑑別に世界的貢献をしている由。そういうことはともかく(読んでわかることですが)あの光田という人の話しかた、生きかたとジャーナリズムというものの対比は実に感銘深かった。一事をなしとげるとはどういうことかということを示していてね。日本全体で三万足らずの患者の由(台湾、朝鮮のことは出ませんでした、そう云えば。貰った表にもなかったと思う)。

一寸別の話ですが、北條民雄が川端氏に推されて小説など発表するようになったら、癩文学というような語がつくられたことに北條は非常に不満を示しています。生理的の病気で文学の性質をわける、特殊に見る愚劣さについて。これは、かねがね私が北條の文学で川端さんが命の力をやたら感歎することについて、ある憤りさえ感じていたのと、或る共通をもちます、逆な方向から。私はあの当時よくそう思った。そこらの文士どもは、何と日頃命の緊張その意味、それを持ち又すてることの人間性の内容を感じることなくいるのだろう。