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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

幅のひろい前かけかけて、それはいつかのように黄色ではなく、紺のですが。

私たちの生活、そこに流れている心持、それはこの家の隅々に漲っていてね、ここは私たちにとってまごうかたなきわが家です。元とちがって、朝早いから不便もすくないでしょう。窓を青葉に向ってあけ、よく勉強し、仕事をし、あなたのお体を段々とよくして行きましょう。

いろいろに工夫して生活して、生活の術を会得してゆくのも面白いと思います。そのうちには又誰かいる人も見つかりましょうから。

本月はね、十五日までまだつづきがいそがしく。伊藤整の作品のブックレビューなどしなければなりません。私はこの作家はこのみません。しかし、判断をもつところまで行かないで読む若い人たちのためには、よくその人々の納得ゆく形で評価のよりどころを与えなければならないから、そういう意味で、しゃんとしたものをかこうと思って居ります。「幽鬼の街」、「幽鬼の村」、それらは現代の知識人の悲しみ、鬼であるのだそうですが、この作者が現実の生活では大陸文学懇話会とかいうところの財務員というのをしているというのも面白い。今日は行為の時代ということが流行って居りますが、行為の本質という点でそれを見ると、やはり結局はいかに生きるかということと、どういう文学が生れるかということとの関係になり面白いと思い